肺の細菌叢が癌や免疫に与える影響とは?
【タイトル】The Influence of Lung Microbiota on Lung Carcinogenesis, Immunity, and Immunotherapy.
https://www.cell.com/trends/cancer/fulltext/S2405-8033(19)30265-1
【雑誌】Trends Cancer. 2020 Feb;6(2):86-97(Cell Press系)
【インパクトファクター】8.884(2020)
【著者】Ramírez-Labrada AG(スペイン)
【目的】
肺のmicrobiomeが宿主の免疫状態にどう関連しているか?を調査
【要約】
・肺のmicrobiomeは肺の発癌と他の原発性癌からの肺転移の確立に関与している
・肺のmicrobiomeは慢性炎症や癌遺伝子などの点で悪性腫瘍のリスクを調整する可能性
・ICIs使用中に抗生剤で治療された症例はOSやPFSが短くなってしまう
・腸内細菌叢のprofilingで腫瘍抑制と免疫療法の反応性に関わる菌も同定されている
・細菌叢は発癌プロセルや癌細胞における免疫応答の両方のモジュレーターの可能性
・腸内細菌叢と肺微生物叢は異なる可能性があり、ICI治療における肺炎症が特定の微生物の存在に依存するかどうかはまだ不明。
【私見】
腸内細菌叢における抗生剤使用がICIの治療効果に関わるという報告は結構多く出ている。通常考えると、抗生剤使用による腸内細菌叢の破壊により免疫能が低下するためと考えられる。
実際に抗生剤の使用は腸内細菌叢の破綻を来して下痢を起こさせてしまう。
各々の臓器に生着している細菌叢がどこまで免疫能に関わり発癌やその抑制に寄与しているのかは今もなお研究が進んでいるのであろうが、なかなか宿主側因子である細菌叢を改善するというのは容易ではない。
現時点での理解としては、免疫チェックポイント阻害薬使用時にはなるべく抗生剤使用は避けるべきという点だろうか。ただし実臨床ではいつどのタイミングで感染症に罹患するかは分からない事もあり、今後どう考えるのか悩ましいところである。