腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

肝細胞癌の2ndLine治療で抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体は有用なのか?

●Ipilimumab and nivolumab in advanced hepatocellular carcinoma after failure of prior immune checkpoint inhibitor-based combination therapies: a multicenter retrospective study

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35864269/

(journal) https://link.springer.com/article/10.1007/s00432-022-04206-8

(雑誌)J Cancer Res Clin Oncol. 2022 Jul 21. doi: 10.1007/s00432-022-04206-8.

(Impact factor)4.553(2022)

(author) Daniel RoesslerLMU Munich, Marchioninistrasse(ドイツ)

(癌腫肝細胞癌

(カテゴリー)2ndLine 免疫チェックポイント阻害剤併用

(目的)免疫チェックポイント阻害薬で既治療の進行肝細胞癌症例に対する2ndLineでのIpilimumabNivolumab有効性と安全性の検証

(結果)AtezolizumabBevacizumabまたは他の免疫チェックポイント阻害薬ベースの併用療法を受けた109例の解析。

このうちで10例がIpilimumabNivolumab後治療を受けていた。患者の大半はBarcelona Clinic Liver CancerBCLC)ステージC80%)のHCCで、Child-Pugh Aで定義される肝機能は維持されていた(80%)

15.3か月の追加解析でORR30%DCR40%PFS中央値は2.9ヵ月、OS中央値は7.4ヵ月であった。

 

(解釈上の限界)

レトロスペクティブの検証のため前向き試験並びに別治療との比較試験が必要となる

・既報のcheckmate040試験の既治療例を対象とした群よりも本検証はOSが短すぎる

・抗PD-1/PD-L1抗体で治療失敗した症例に対して効果を示すメカニズムがまだまだ仮説レベル

・現状では適応外のため追加検証が困難

 

(自己考察)

現在の実臨床では進行肝細胞癌では基本的にはAtezolizumabBevacizumabが優先される。

今後はHIMALAYA試験で結果を出したDurvalumabTremelimumabが(https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2022.40.4_suppl.379

が次の候補になってくると思うが、試験上では1stLine縛りになりそうであり、少なくともAtezolizumabBevacizumab治療後の2ndLineではおそらくは適応外となってしまうため、本検証のように有用なのかどうかはわからないところでもある。

1stLineで免疫チェックポイント阻害薬を使ってしまうとその後の同系統の薬剤が使いづらい、前治療失敗(PDAE後の免疫チェックポイント阻害剤は有用か?その際のレジメンは何が最適か?という点が一つのCQになってくると考えられる。

本報告以外に中国から抗PD-1/PD-L1抗体治療後にIpilimumab+抗PD-1抗体(主にpembrolizumab)で検証された報告がある。この報告ではORR16%と低くかったがDulation of response11.5か月と長い傾向であったようだ。データの背景やレジメンの違いなどのバイアスが大きいため、この分野での新たな検証は前向き臨床試験で確かめていくしかないだろう。本検証で奏効したすべての症例でirAEが発現していたようだ。1例治療関連死を出しているようなので注意も必要だろうこれ以上の臨床での検証は薬剤が適応追加を行わなければ難しいし、ほとんどすべての試験が1st Lineで検証しているため2ndLineしかも免疫チェックポイント阻害薬既治療例)での検証は組みづらい。気になるテーマだけに、レジメンのライン別の使用hあ色々フレキシビリティを持たせた承認を考えていけないのか・・・(データは必要にはなるとは思うが・・)。今までもここは非常に悩ましい境界線のまま来ている状況でもありLineの概念を超えて、こういう症例ならばLineに限らず使用を検討できるという動きになってもらいたいものではある。そのためには諸々のデータを積み重ねた議論が必要になるが。