腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

切除不能な局所進行性・転移性尿路上皮がん患者に対するenfortumab vedotin+keytruda(pembrolizumab)が有望な結果

アステラス社プレスリリースがアップデートされてました。

https://www.prnewswire.com/news-releases/astellas-and-seagen-announce-positive-topline-results-for-padcev-enfortumab-vedotin-ejfv-with-keytruda-pembrolizumab-as-first-line-treatment-for-advanced-urothelial-cancer-301592924.html

Seagen Inc. と共同して進めている製剤、PADCEV® (enfortumab vedotin-ejfv) において、転移性尿路上皮癌をターゲットとした試験

MSDの抗PD-1抗体のKeytruda(pembrolizumab)と併用したphaseⅠb/Ⅱ(EV-103)試験で有望な結果が得られたと報告。

この試験はコホートAからKまでなる広範なコホート群での検証となっている。

 

アステラス社プレスリリースがアップデートされてました。

Seagen Inc. と共同して進めている製剤、PADCEV® (enfortumab vedotin-ejfv) において、転移性尿路上皮癌をターゲットとした試験

MSDの抗PD-1抗体のKeytruda(pembrolizumab)と併用したphaseⅠb/Ⅱ(EV-103)試験で有望な結果が得られたと報告。

この試験はコホートAからKまでなる広範なコホート群での検証となっている。

まぁ、PhaseⅠ/Ⅱなので許されるものかとは思えるが、かなり多岐にわたっているなぁ・・と。

このコホートKはシスプラチンベースの治療が無効な切除不能な局所進行性・転移性尿路上皮がん患者に対するファーストライン治療となっており、周術期でプラチナベースの治療が行われて再発した症例を対象としている。

 

enfortumab vedotin 1.25mg/kg単独 vs enfortumab vedotin 1.25mg/kg+pembrolizumabのランダマイズドPhaseⅡの様相を呈している。

プライマリエンドポイントは奏効率のようで、コホートKの主要評価項目である盲検独立中央判定(BICR)により

64.5%の客観的奏効率(ORR)(95% CI: 52.7~75.1 )が確認されたことで達成し他との事。

奏効持続時間はまだ到達しておらず継続しているとの事(詳細不明)。

毒性も許容範囲であったということで、本試験上の一つのカテゴリをクリアしたことになるとの事。

この結果はまだ国際学会では開示されていないようなので、楽しみにしたいところである。

 

肝細胞癌の2ndLine治療で抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体は有用なのか?

●Ipilimumab and nivolumab in advanced hepatocellular carcinoma after failure of prior immune checkpoint inhibitor-based combination therapies: a multicenter retrospective study

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35864269/

(journal) https://link.springer.com/article/10.1007/s00432-022-04206-8

(雑誌)J Cancer Res Clin Oncol. 2022 Jul 21. doi: 10.1007/s00432-022-04206-8.

(Impact factor)4.553(2022)

(author) Daniel RoesslerLMU Munich, Marchioninistrasse(ドイツ)

(癌腫肝細胞癌

(カテゴリー)2ndLine 免疫チェックポイント阻害剤併用

(目的)免疫チェックポイント阻害薬で既治療の進行肝細胞癌症例に対する2ndLineでのIpilimumabNivolumab有効性と安全性の検証

(結果)AtezolizumabBevacizumabまたは他の免疫チェックポイント阻害薬ベースの併用療法を受けた109例の解析。

このうちで10例がIpilimumabNivolumab後治療を受けていた。患者の大半はBarcelona Clinic Liver CancerBCLC)ステージC80%)のHCCで、Child-Pugh Aで定義される肝機能は維持されていた(80%)

15.3か月の追加解析でORR30%DCR40%PFS中央値は2.9ヵ月、OS中央値は7.4ヵ月であった。

 

(解釈上の限界)

レトロスペクティブの検証のため前向き試験並びに別治療との比較試験が必要となる

・既報のcheckmate040試験の既治療例を対象とした群よりも本検証はOSが短すぎる

・抗PD-1/PD-L1抗体で治療失敗した症例に対して効果を示すメカニズムがまだまだ仮説レベル

・現状では適応外のため追加検証が困難

 

(自己考察)

現在の実臨床では進行肝細胞癌では基本的にはAtezolizumabBevacizumabが優先される。

今後はHIMALAYA試験で結果を出したDurvalumabTremelimumabが(https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2022.40.4_suppl.379

が次の候補になってくると思うが、試験上では1stLine縛りになりそうであり、少なくともAtezolizumabBevacizumab治療後の2ndLineではおそらくは適応外となってしまうため、本検証のように有用なのかどうかはわからないところでもある。

1stLineで免疫チェックポイント阻害薬を使ってしまうとその後の同系統の薬剤が使いづらい、前治療失敗(PDAE後の免疫チェックポイント阻害剤は有用か?その際のレジメンは何が最適か?という点が一つのCQになってくると考えられる。

本報告以外に中国から抗PD-1/PD-L1抗体治療後にIpilimumab+抗PD-1抗体(主にpembrolizumab)で検証された報告がある。この報告ではORR16%と低くかったがDulation of response11.5か月と長い傾向であったようだ。データの背景やレジメンの違いなどのバイアスが大きいため、この分野での新たな検証は前向き臨床試験で確かめていくしかないだろう。本検証で奏効したすべての症例でirAEが発現していたようだ。1例治療関連死を出しているようなので注意も必要だろうこれ以上の臨床での検証は薬剤が適応追加を行わなければ難しいし、ほとんどすべての試験が1st Lineで検証しているため2ndLineしかも免疫チェックポイント阻害薬既治療例)での検証は組みづらい。気になるテーマだけに、レジメンのライン別の使用hあ色々フレキシビリティを持たせた承認を考えていけないのか・・・(データは必要にはなるとは思うが・・)。今までもここは非常に悩ましい境界線のまま来ている状況でもありLineの概念を超えて、こういう症例ならばLineに限らず使用を検討できるという動きになってもらいたいものではある。そのためには諸々のデータを積み重ねた議論が必要になるが。

腫瘍微小環境を抗PD-1/PD-L1抗体が聞きやすいように変化するためにはどういう手法があるか?

Therapeutic targeting of PD-1/PD-L1 blockade by novel small-molecule inhibitors recruits cytotoxic T cells into solid tumor microenvironment

【雑誌】J Immunother Cancer. 2022 Jul;10(7):e004695

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35863821/

(journal) https://jitc.bmj.com/content/10/7/e004695

(Impact factor)11.367

(author) Rita C Acúrcio ポルトガル

(癌腫) pan-tumor

(カテゴリー)経口剤

(目的)低分子阻害で腫瘍微小環境におけるT細胞機能を強化する方法を評価

(方法)PD-1/PD-L1相互作用を調節する新規低分子を発見するためにin silico解析とin vitroex vivoin vivoの実験的研究など様々な角度から検証、マウスモデルを使用しT-cellリクルートメントと機能評価を実施

(結果)フェナントレン骨格を有するcompound 69PD-1/PD-L1相互作用を阻害し腫瘍微小環境にCD8Tリクルートする事ができていた。今後はPD-1/PD-L1阻害の低分子化合物の検証も視野に入ってくる

(自己考察)

解釈上の問題は諸々あるため割愛するが、この化合物は通常のモノクローナル抗体で臨床応用されている抗PD-L1抗体のatezolimuzabと同容量、同じ投与経路で同等以上の腫瘍増殖やT-cellの腫瘍へのリクルートを成功させていた。(ex vivoの検証)

通常低分子化合物ならば抗体製剤に近づけるのであればかなりの投与量を必要とするが、そうではなかったということらしい。

初回通過効果や局所移行率の問題などがありそうなものだが、マウスモデルでは成功していたようではある。

ただまだ実験段階であり、安全性の検証やヒトで同じ再現が取れるかなど課題は山積みであるが、本当に治療効果が変わらないのであれば経口剤ほど望ましいものはなく、生産ラインも簡潔化できるので患者、企業双方にとってメリットにはなるのかもしれない。

新たな投与経路で治療効果が非劣勢ならばそれに望ましいものはない。と感じる。

メラノーマの治療薬ipilimumabは投与回数を減らすことは出来るのか?

Early Response Assessment in Advanced Stage Melanoma Treated with Combination Ipilimumab/Nivolumab

【雑誌】Front Immunol. 2022 Jul 6;13:860421. doi: 10.3389/fimmu.2022.860421. eCollection

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35874737/

(journal) https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2022.860421/full

(Impact factor)7.561(2022)

(author) Vincent T. Ma :University of Wisconsin(US)

(癌腫) melanoma

(目的)melanomaにおいての標準値量である、抗PD-1抗体(Nivolumab)+抗CTLA-4抗体(Ipilimumabの投与回数を減らすことで有効性を維持しつつ有害事象を減らせられるかを検証

(方法)上記併用療法を行ったmelanoma症例コホートにおいてレトロスペクティブ解析。併用療法の1回と2回投与でClinical benefit Response(CBR)を得られた症例のOSPFSを検証CBRStable deseasepartial responseconplete responseと定義。さらに調整した症例群で12回投与と34回投与を比較している

(結果)199例を評価しており、併用療法1回だけ投与群でCBRを得られている症例は増悪症例(PD)に比べてと比較してPFSHR: 0.16, 95% CI 0.08-0.33; p<0.001)およびOSHR: 0.12, 0.05-0.32; p<0.001)改善した。また、I/N2回投与したCBR者(対PD)では、PFSHR: 0.09, 0.05-0.16; p<0.001)とOSHR: 0.07, 0.03-0.14; p<0.001)が改善された。PFSHR: 0.95, 0.37-2.48; p=0.921)とOSHR: 1.04, 0.22-4.78; p=0.965)。I/N1または2投与と3または4投与を比較しても生存リスクの差はなかった

(結論PD-1抗体(Nivolumab)+抗CTLA-4抗体(Ipilimumab)の1回、2回でCBR症例を得られた症例は良好な成績に関連する。毒性軽減の観点からより少ない投与回数で済むべきかは別途検証が必要である。

 

(解釈上の限界)

・本試験の結果を受けて、奏効している治療をいきなり止めるというわけにはいかない

CBRで検証されているが、結局のところ投与回数別のCRPRの長期予後が不明なため休薬判定にはまだリスクがある

・本研究は活動性の脳転移症例などを反映しており、通常の臨床試験などのクライテリア外の症例も含んでいる

・今は体重固定用量で使用できる状況だが、Nivolumab1mg/kgで治療されている

・評価方法が通常のRECIST基準ではなくiRECISTを用いて行っている

・レトロスペクティブなため前向き試験に変えて、投与回数別、奏効別に長期で見なければわからない

 

(自己考察)

本検証でirAEが原因で治療が中断したケースは初回投与群で11%2回投与群で26%となっていた。3回投与ではGrade3以上のirAE50%と結構多く発現しているところが今までの報告と変わっているところだろうか?Melanomaではこのipilimumabの投与は3mg/kgの投与となっており、用量が多い点が指摘されている。抗CTLA-4抗体は用量依存的な毒性を有しているとのことなので、投与を重ねるごとに有害事象にはつながりやすい可能性もある。

他の疾患ではIpilimumab1mg/kg6週回しとなっているようなので、4回投与を行っている疾患は限定的かとは思うが、無駄な投与を続けて毒性のリスクを上げるよりも、primingを短期でしっかり起こしてPD-L1を出している腫瘍の抗原認知をしてPD-1を出しているCD8Tの疲弊解除をする抗PD-1抗体に託してメンテナンスを検証することも重要であると感じさせられた。

【経口剤】免疫チェックポイント阻害剤も経口剤も視野に

●-Therapeutic targeting of PD-1/PD-L1 blockade by novel small-molecule inhibitors recruits cytotoxic T cells into solid tumor microenvironment

【雑誌】J Immunother Cancer. 2022 Jul;10(7):e004695

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35863821/

(journal) https://jitc.bmj.com/content/10/7/e004695

(Impact factor)11.367

(author) Rita C Acúrcio ポルトガル

(癌腫) pan-tumor

(カテゴリー)経口剤

(目的)低分子阻害で腫瘍微小環境におけるT細胞機能を強化する方法を評価

(方法)PD-1/PD-L1相互作用を調節する新規低分子を発見するためにin silico解析とin vitroex vivoin vivoの実験的研究など様々な角度から検証、マウスモデルを使用しT-cellリクルートメントと機能評価を実施

(結果)フェナントレン骨格を有するcompound 69PD-1/PD-L1相互作用を阻害し腫瘍微小環境にCD8Tリクルートする事ができていた。今後はPD-1/PD-L1阻害の低分子化合物の検証も視野に入ってくる

(自己考察)

解釈上の問題は諸々あるため割愛するが、この化合物は通常のモノクローナル抗体で臨床応用されている抗PD-L1抗体のatezolimuzabと同容量、同じ投与経路で同等以上の腫瘍増殖やT-cellの腫瘍へのリクルートを成功させていた。(ex vivoの検証)

通常低分子化合物ならば抗体製剤に近づけるのであればかなりの投与量を必要とするが、そうではなかったということらしい。

初回通過効果や局所移行率の問題などがありそうなものだが、マウスモデルでは成功していたようではある。

ただまだ実験段階であり、安全性の検証やヒトで同じ再現が取れるかなど課題は山積みであるが、本当に治療効果が変わらないのであれば経口剤ほど望ましいものはなく、生産ラインも簡潔化できるので患者、企業双方にとってメリットにはなるのかもしれない。

新たな投与経路で治療効果が非劣勢ならばそれに望ましいものはない。と感じる。

 

ASCO-SITC2021では別の製剤で経口の抗PD-1抗体の開発をIncyte社が手がけていると言う情報もある。

SITC 2021 – Incyte unveils its oral checkpoint blocker | Evaluate

またブリストル・マイヤーズ社と日本のペプチドリームが提携していた抗PD-1抗体経口剤も今から臨床入りを刷るという情報もある。

peptidreamblog.blogspot.com

ただしこちらは放射性同位体で蛍光標識をして、将来的にはPETで抗PD-1抗体の効果を見定めるという診断用医薬品として開発されているようだ。

この分野はまだまだ目が離せそうない。

胃癌での免疫チェックポイント阻害薬末梢血biomarkerとしてアルブミン・CRP指標のGlasgow Prognostic Score (GPS)が有用な可能性

Soluble programmed cell death ligand 1 associated with clinical outcome in gastric cancer patients treated with nivolumab: Blood based biomarker analysis of DELIVER trial (JACCRO-GC08AR)

【雑誌】Annals of oncology VOLUME 33, SUPPLEMENT 4, S359, JUNE 01, 2022

(journal) https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(22)01097-3/fulltext

(Impact factor)

(author) H. Kawakami(kinki university)

(癌腫胃癌

(カテゴリー)Glasgow Prognostic Score (GPS)

(目的)胃癌におけるNivolumabの末梢血におけるbiomarker探索

(方法)501例のうち439例のNivolumab使用例の血清で使用前のsoluble markerを調査、primary endpointsPD-1sPD-L1、およびsCTLA-4PFSとの関連性、secondary endpointは可溶性マーカーと臨床転帰のいくつかの関連性について。 Glasgow Prognostic Score (GPSアルブミンCRPの点数毎に層別化を実施。各々albumin <3.5 g/dL 1点,CRP 1.0 mg/dL 1点を割り当て,低リスク(0点),中リスク(1点),高リスク(2点)のスコアとしている。

(結果)

sPD-L1が高いとPFS不良と相関する傾向だったが有意差はなし(P=.070)、(sPD-1sCTLA-4は関連なし

OS不良はsPD-L1高値(P=.005)sCTLA-4値(p=.023)が関連(sPD-1は関連なし)

ベースライン因子で多変量解析を実施した結果、sPD-L1血清アルブミンCRPOSと独立して関連

GPS012)およびsPD-L1(高 vs. 低)により患者を層別化

OSが最も悪いサブグループは「GPS2 & high sPD-L1」(2.83カ月[95%信頼区間{CI}, 2.40-4.40] 

次いで悪い群は「GPS2 & low sPD-L1 / GPS1 & high sPD-L1 」(4.24カ月[95% CI, 3.40])

最も予後が良好な群は「GPS0 & low sPD-L1」患者(12.00ヶ月 [95% CI, 9.36-13.54] 

 

(結論ベースラインのsPD-L1値は、進行胃癌におけるPD-1阻害ニボルマブの生存を予測する可能性があり、そのうち、栄養と炎症マーカーであるGPSを組み合わせることで予測精度はより信頼できるものになる可能性

(解釈上の限界)

solble factorのカットオフの定義が弱い(ROC設定ができていない)

・単独コホートの検証のため、ランダマイズドPhaseクラスで検証される必要性

solble markerが各々何由来なのかが不明瞭

(自己考察)

2021年に日本臨床腫瘍学会で見かけたときから興味を持っていた試験。JACCROという臨床試験Groupで実施されている胃癌におけるNivolumabの最適化を目的としたものとなっている。今回はその続報ということで、近畿大学の川上氏からアップデートされている。

Solble factorが免疫チェックポイント阻害薬にどういう影響を及ぼすかは小さなコホート研究でいくつか検証されているが、これだけ大規模な検証は見たことがなかったので期待していた。Solble factorの一番厄介なところは、その因子が何由来のものなのかがよくわからないというところである。各細胞から切り離された因子が末梢血に浮遊しているわけだが、これらの因子は腫瘍だけではなく正常組織由来も考えられる。健常人をコントロールとしたValidation cohortcontrolに立てておけばより明確だったのではないかと感じる。

奏効例、無効例でのsolble markerの変化量が気になるところでもあるし、1回目の効果判定の際にどう変動しており臨床効果に相関しているかが気になる。ただし画像所見のタイミングを規定していない限り検証は無理なので、やはりちゃんとした臨床試験でないとタイミング一致は難しいだろう。

GPSも多方面で検証されているが、これだけくっきり差が出るということは、やはり免疫チェックポイント阻害剤はhost factorに着目をするべきであると感じさせられるものであり、単にPS不良ではなく、PS不良の原因は何なのかを分解する必要性を感じさせられる。

アルブミンは免疫チェックポイント阻害剤において結構強い予後因子になっているという報告もあれば、CRPもベースライン高値で予後不良というデータも多く出ている(ただし最近はCRP flareのように一過性にCRPも上昇するケースもあるので絡みが難しそう)。しかしCRPは海外ではルーチンで測定されておらず、日本で積極的に検査されている指標でもあるので、日本のオリジナリティが活きるとも思える。

現在は、Nivolumab単剤で使われる機会は併用レジメンで展開されているため、同じような傾向になるのかを個人的には見てみたい。

特に化学療法と併用するケースや抗CTLA-4抗体と併用するケース、また腎細胞癌ではTKI肝細胞癌ではbevacizumabと併用されるので同じような傾向になるのかも気になる。

 

 

NSCLCにおいてPD-L1測定以外にHLA classⅡも一つの候補になり得るか?

HLA class II molecule HLA-DRA identifies immuno-hot tumors and predicts the therapeutic response to anti-PD-1 immunotherapy in NSCLC

【雑誌】BMC Cancer. 2022 Jul 6;22(1):738. doi: 10.1186/s12885-022-09840-6. open access

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35794593/

(journal) https://bmccancer.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12885-022-09840-6

(Impact factor) 4.069(2022)

(author) Jie Mei : The Affiliated Wuxi People's Hospital of Nanjing Medical University

(癌腫) NSCLC

(カテゴリー)HLA

(目的)NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害剤の患者層別化のためのbiomarkerの模索

(方法)データベース研究としてbiomarker候補として関連する7因子を抽出して自施設のコホート群で検証

(結果)NSCLC組織検体ではヒト白血球抗原DRα(HLA-DRA)がダウンレギュレートしており、腫瘍細胞と免疫細胞の両方がHLA-DRAしているケースで良好なアウトカムを示していた。また別癌腫での検証でも同様にHLA-DRATMEの炎症所見と関連していた

(結論) HLA-DRAが免疫チェックポイント阻害剤のbiomarker候補の一つとなる可能性がある

(解釈上の限界)あくまで概念的な部分の引用のため割愛

(自己考察)

HLAT-cellの機能維持の一環で重要であると前々から考えていた。いくつか小さいコホートでも検証されている。

免疫細胞側のHLAの機能、腫瘍細胞側の抗原提示能の確認の一環でのHLA発現は切っても切り離せない関連であると考える。

免疫チェックポイント阻害剤においては流動的な腫瘍側のPD-L1よりもHLA class/Ⅱ発現のIHCで見たほうが意外と鋭敏だったりして・・?

そう思ってはいるのだが、このコホートではPD-L1とほぼ同等のような感じ・・?そうであれば取って代われるまでには至れないのか?もっとちゃんとしたコホートで検証をしても良いのかもしれない。特にHLAは人種差モ出てくるところから日本のデータで検証できればよりよい物になるのかもしれない。

過去、melanomaにおける大規模な試験でHLAと免疫チェックポイント阻害剤の効果を見た報告があったような気がしたが、その時はOSの因子になっていなかったようではあるが、もう一回調べてみようかな?