腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

【経口剤】免疫チェックポイント阻害剤も経口剤も視野に

●-Therapeutic targeting of PD-1/PD-L1 blockade by novel small-molecule inhibitors recruits cytotoxic T cells into solid tumor microenvironment

【雑誌】J Immunother Cancer. 2022 Jul;10(7):e004695

(pubmed )https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35863821/

(journal) https://jitc.bmj.com/content/10/7/e004695

(Impact factor)11.367

(author) Rita C Acúrcio ポルトガル

(癌腫) pan-tumor

(カテゴリー)経口剤

(目的)低分子阻害で腫瘍微小環境におけるT細胞機能を強化する方法を評価

(方法)PD-1/PD-L1相互作用を調節する新規低分子を発見するためにin silico解析とin vitroex vivoin vivoの実験的研究など様々な角度から検証、マウスモデルを使用しT-cellリクルートメントと機能評価を実施

(結果)フェナントレン骨格を有するcompound 69PD-1/PD-L1相互作用を阻害し腫瘍微小環境にCD8Tリクルートする事ができていた。今後はPD-1/PD-L1阻害の低分子化合物の検証も視野に入ってくる

(自己考察)

解釈上の問題は諸々あるため割愛するが、この化合物は通常のモノクローナル抗体で臨床応用されている抗PD-L1抗体のatezolimuzabと同容量、同じ投与経路で同等以上の腫瘍増殖やT-cellの腫瘍へのリクルートを成功させていた。(ex vivoの検証)

通常低分子化合物ならば抗体製剤に近づけるのであればかなりの投与量を必要とするが、そうではなかったということらしい。

初回通過効果や局所移行率の問題などがありそうなものだが、マウスモデルでは成功していたようではある。

ただまだ実験段階であり、安全性の検証やヒトで同じ再現が取れるかなど課題は山積みであるが、本当に治療効果が変わらないのであれば経口剤ほど望ましいものはなく、生産ラインも簡潔化できるので患者、企業双方にとってメリットにはなるのかもしれない。

新たな投与経路で治療効果が非劣勢ならばそれに望ましいものはない。と感じる。

 

ASCO-SITC2021では別の製剤で経口の抗PD-1抗体の開発をIncyte社が手がけていると言う情報もある。

SITC 2021 – Incyte unveils its oral checkpoint blocker | Evaluate

またブリストル・マイヤーズ社と日本のペプチドリームが提携していた抗PD-1抗体経口剤も今から臨床入りを刷るという情報もある。

peptidreamblog.blogspot.com

ただしこちらは放射性同位体で蛍光標識をして、将来的にはPETで抗PD-1抗体の効果を見定めるという診断用医薬品として開発されているようだ。

この分野はまだまだ目が離せそうない。