腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

免疫チェックポイント阻害薬は血栓症を誘発するのか?

最近になってよく耳にする機会が増えた「Cardio oncology」。 これを直訳すると「腫瘍循環器学」とでもいうのだろうか? この領域における専門的な学会も立ちあがっており、 臨床におけるがん患者の生命予後を循環器領域の観点で改善しようという働きかけを…

Eli LillyはもうImmune oncologyから撤退?

Eli Lillyのパイプラインにはそれなりに期待していたのだけれど、結果が伴わなかったのと流れ弾を受けて、Immune oncology部門は無くなってしまいそう。 Eli Lillyは2019年4Qの決算発表において3つのpipelineの開発を止める事を公表した。 どこかにpipeline…

ASCO2019アップデート Driver mutation無しのⅣ期NSCLCにおける化学療法のガイドライン

肺癌における化学療法も2017年から非常に多様化してきた。 ASCOにも昨年参加したが、もうDriver mutationか免疫チェックポイント阻害薬の話題ばかりでプラチナダブレットの話題は全くもってナリをひそめたようなものになってきている。ここ数年で治療体系も…

リンパ球を増やすIL-7製剤と抗PD-1抗体(Keytruda)の新たな可能性

また色々と可能性を模索しているようです。 MSDは結構、新たな治療ストラテジー創出に向けてアグレッシブですね。 T-cellに特化したNeoImmuneTech、Inc.という会社と組んで、 Hyleukin-7(NT-17)という製剤と現在、臨床応用されている抗PD-1抗体のKeytruda…

(ASCOGI 2020)抗PD-L1抗体(Avelumab)によるHER2ネガティブの胃癌と胃接合食道癌における1stLine化学療法後のAvelumabメンテナンス療法 vs 化学療法の試験

つい先日まで開催されていたASCO-GI2020。 この中でほのかに期待していた試験があった。 Oralで発表になったAbst No2780の試験 抗PD-L1抗体(Avelumab)によるHER2ネガティブの胃癌と胃接合食道癌における1stLine化学療法後のAvelumabメンテナンス療法 vs 化…

軟部肉腫のグルタミン依存性に断つことによる治療応用の可能性

軟部腫瘍に対する私の興味は尽きない。 軟部肉腫の予後の悪さをどうにかしたいという気持ちもあるが、このような肉腫ができるという事は、そもそも生体内で相当な異常がない限り発現しないだろうからだ。 となると、その異常はいったい何なのか?これがわか…

膀胱癌における免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

膀胱癌はもともと薬物治療による選択肢が少ないと言われている。 昨年あたりから免疫チェックポイントがプラチナ製剤を含む治療の後に使えるような状況になっては来ているが、まだ治療効果は限定的でもある。 免疫チェックポイント阻害薬単剤での治療の限界…

【基礎】マクロファージを働かせ免疫チェックポイント阻害薬の効果を上げられるかの検証

あくまでもマウスレベルでの検討であるため、まだまだ臨床への道は遠いかもしれないが、腫瘍免疫を司る上で欠かせないTumor associated macrophage(TAM)について触れている興味深い文献があった。 通常、このマクロファージはその表現型の違いからM1タイプ…

高齢者肺癌においても免疫チェックポイント阻害剤単剤は有用なのか?

肺癌で免疫チェックポイント阻害剤単剤が適応を取ってからもう3年以上経つのかと思うと・・本当に早いものでもある。melanomaで最初適応を取った事にも当時驚いたが、肺癌においても適応を有したことに大きな拡がりを感じたものだ。 今は、単剤での治療効果…

【nature】B-cellが免疫チェックポイント阻害薬の効果発現に重要な可能性を示唆

Bcells and tertiary lymphoid structures promote immunotherapy response. 【Nature. 2020 Jan 15. doi: 10.1038/s41586-019-1922-8】 【関連】 ・免疫チェックポイント阻害薬の効果発現に必要な因子は何か? ・どういう腫瘍微小環境であれば長期予後を実…

【nature】難治性軟部肉腫で免疫チェックポイント阻害薬が有用な可能性を示唆

●B cells are associated with survival and immunotherapy response in sarcoma. 【Nature. 2020 Jan 15. doi: 10.1038/s41586-019-1906-8.】(open accessではない) Petitprez F Team Cancer, Immune Control and Escape, Centre de Recherche des Cordel…

免疫チェックポイント阻害薬を効かせるにはB-cell(CD20+)の存在が重要(nature)

がんを制御するためには、TIL(tumor infiltrated lymphocyte)の存在が重要と言われている。これは腫瘍内にCD8+Tcellが存在するという事は、その腫瘍は免疫系に感作されていると言えることでもある。となればそこに浸潤しているT-cellは腫瘍特異的T-cellで…

肝細胞癌における免疫チェックポイント阻害薬の初期効果予測は?

私がoncologyのreserchを始めたのにはきっかけがある。 幼い時から親族や知人を消化器癌で亡くすケースが多く、この病を一刻も早く克服したいという事からでもある。 まだ肝細胞癌においては、今現在、話題ともなっている免疫チェックポイント阻害薬は1剤も…

がんゲノム医療の限界点とは?(より良い医療に近づくためには?)

国内でもようやく始まってきた「がんゲノム医療」。これにより、個々の患者さんにおいてどういう遺伝子変異が原因となっている癌なのかを網羅的に調べることができることから、それに応じた治療方法を検証することが出来るというメリットがある。 日本では現…