腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

肝細胞癌における免疫チェックポイント阻害薬の初期効果予測は?

私がoncologyのreserchを始めたのにはきっかけがある。

幼い時から親族や知人を消化器癌で亡くすケースが多く、この病を一刻も早く克服したいという事からでもある。

まだ肝細胞癌においては、今現在、話題ともなっている免疫チェックポイント阻害薬は1剤も国内承認をされていないわけではあるが、今後の可能性を考える上で、どういう症例で可能性があるのかを研究していた際に見つけた論文でもある。

今日はそれを考察してみたい。

 

Predictors of Response and Survival in Immune Checkpoint Inhibitor-Treated Unresectable Hepatocellular Carcinoma.

Cancers (Basel). 2020 Jan 11;12(1).】(オープンアクセス)(IF:6.162)

【著者】I Lee PC

School of Medicine, National Yang-Ming University, Taipei 11221, Taiwan.

【URL】https://www.mdpi.com/2072-6694/12/1/182

 

【現状の問題点】

・なぜ肝細胞癌には免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいのか?

肝細胞癌における予後因子とは何か?

 

【内容】

 

Nivolumabやpembrolizumabなどの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は肝細胞癌HCC)における有望な治療薬になるが、まだどの症例に有用かは明らかになっていない。

この報告では、切除不能HCC患者におけるICI治療のOSに関連する反応および因子の潜予測を行っている。

・ICI治療を受けた95人での検討。画像評価はRECIST で実施。

・評価可能な画像を持つ90人の患者のうち、奏効率は24.4%。

・Child-Pugh Aの患者または併用治療を受けた患者でのORRは高かった。

・初期(4週以内)のα-フェトプロテイン(AFP)が10%を超える症例だけが、奏効率における独立した予測因子だった。(オッズ比:7.259、p = 0.001)。

・ベースラインAFP≥10ng / mLの患者では、早期にAFPを低下する患者ではAFPが低下しない症例よりもORRが有意に高かった(10.2%に対して63.6%、p <0.001)、また良好な疾患制御率(DCR)だった(81.8%対14.3%、p <0.001)。

・初期のAFPとアルブミンビリルビン(ALBI)グレードの低下またはChild-Pugh分類は、様々な検証においてICI治療を受けたHCCのOSに関連する独立した要因だった。

 

【備考】

結論として、ICI治療を受けたHCC症例でAFPとALBIとChild-pagh分類がOSに関わりそうであるというものだが、ソラフェニブやレンバチニブも同様なのではないか?これらは肝細胞癌そのものの予後予測因子でもあり、ソラフェニブやレンバチニブなどmulti-kinase inhibitorでも同様の傾向であるのであれば、効果予測因子にはならず、肝細胞癌治療における予後因子という事になる。ただ、仮にICi治療を行っていたとして、この治療が有効なのかどうかを知るためのモニタリングとしては臨床上では補助的に役立つ可能性もあるかもしれない。一方で、この解釈が他の団体や治験結果からも成り立つのかどうかを検証してもらいたいものでもある。

 

特に治験(PhaseⅢ)ならば対抗となるTKIやプラセボなどがあると思うので、初期効果予測にどこまで有用なのかの対比も行えるのではないかと考える。

 

今後、肝細胞癌において有望な可能性があるのは、MSDのpembrolizumabになってくると考えられる。C型肝炎から派生する肝細胞癌は減ってくるとは考えられるが、未だにC型肝炎罹患者やB型肝炎患者、肝硬変患者など、リスクを持つ患者はいる。その方々においても福音となる治療と目安をいち早く導入してもらいたいものだ。