腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

2020-01-01から1年間の記事一覧

腫瘍量は免疫チェックポイント阻害薬の治療効果にどう相関するか(頭頸部癌)

Pre-treatment tumor size impacts on response to nivolumab in head and neck squamous cell carcinoma. 【雑誌】Auris Nasus Larynx. 2020 Feb 5. https://www.aurisnasuslarynx.com/article/S0385-8146(20)30023-7/fulltext 【インパクトファクター】1.4…

NSCLCにおける抗PD-L1抗体のAtezolizumabで治療恩恵を受ける症例はどういう症例か?

Development and validation of a prognostic model for patients with advanced lung cancer treated with the immune checkpoint inhibitor atezolizumab. 【雑誌】 Clin Cancer Res. 2020 Feb 21. pii: clincanres.2968.2019 https://clincancerres.aacrj…

免疫チェックポイントのirAE予測のbiomarkerの可能性?

Immune-related adverse events are clustered into distinct subtypes by T-cell profiling before and early after anti-PD-1 treatment. 【雑誌】 Oncoimmunology. 2020 Feb 2;9(1):1722023. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/2162402X.2020…

肺の細菌叢が癌や免疫に与える影響とは?

【タイトル】The Influence of Lung Microbiota on Lung Carcinogenesis, Immunity, and Immunotherapy. https://www.cell.com/trends/cancer/fulltext/S2405-8033(19)30265-1 【雑誌】Trends Cancer. 2020 Feb;6(2):86-97(Cell Press系) 【インパクトファ…

食道癌に初めて適応を取ったNivolumab(オプジーボ)

ついにですが、食道癌でも抗PD-1抗体の「Nivolumab:オプジーボ」が適応を取りました。2/21付での適応取得となります。 化学療法で治療失敗した症例に対して使えるようになっています。 現状での食道癌の標準療法はCF療法(5-FU+CDDP)ですので、この治療が…

腎細胞癌におけるNivolumab+Ipilimumab併用療法で3年半の生存率が50%超え!

ASCO-GUで発表になった、腎細胞癌におけるNivolumab+Ipilimumabの治療が当時、標準治療だったSunitinibに対して42ヵ月時点でのOSで勝っていたという発表がOralでされていた。 その内容がBristol myers squibb社のプレスリリースでも大々的に出ている 腎細胞…

放射線と免疫チェックポイント阻害薬 アブスコパル効果はどういう症例で引き起こされる?

個人的にはツボった報告。放射線治療(RT)は照射の際に骨髄にもあたってしまうために骨髄抑制を来してしまう。過去調べていた際にはリンパ球においても、放射線後とベースラインとを比較すると、ベースラインまでリンパ球が戻らないというケースも多く存在…

抗PD-1抗体でCRが取れた症例はやめることが出来るのか?(melanomaにおける検証)

実際に臨床の場で免疫チェックポイント阻害薬使用において悩むケースとして、 仮にCR(complete response)が取れたとして、いつまで治療をするべきか? また、治療中止後に再発してしまった場合にどうするべきか? という所が現時点でも大きな課題となって…

ASCO-GU2020 mUCにおけるenfortumab vedotin+Pembrolizumabの驚異的な効果(PhaseⅡ)

ASCO-GU2020も最終日です。 今年は結構面白そうな演題がたくさん。 その中でもひときわ目立っていたのがこの演題。 Bladderの2ndLineで免疫チェックポイント阻害剤のPembrolizumabが使える状況ではあるが、その治療効果はとても満足のいくものではない。 そ…

最近、某国で大流行の科学的考察がされていない安いメタアナリシス(メタ解析)

根拠のある医療を作り出すためにはまずは動物実験を行い検証し、そして再現性を確認してからヒトでの検証を始めていく。 そしてヒトでの有効性と安全性を評価するために適切な用量を見極める。(PhaseⅠ) 最後に今までの標準治療と比べて優劣をつける・・(P…

やっぱり難しい・・ 膵臓癌におけるICI+RT戦略(PhaseⅠ試験)

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の開発は様々な癌腫で走っているが、膵臓癌に関しては厳しいという現状が浮き彫りになっている。 この膵臓癌、特に膵管腺癌(PDAC)に対してICIの有効性を放射線療法で高められないかの検証を行っている。 今回の検証では…

やはり難しいSCLC治療への道(モノクローナル抗体Dinutuximabの治験失敗)

肺癌の中でも小細胞肺癌(SCLC)は治療選択肢が乏しく、進行も早い事もあり難治性であることが知られている。 この疾患の治療選択を増やすために各企業も色々なアプローチを行っているが、 今回、United Therapeutics社のUnituxinもSCLC開発に失敗したようだ…

Pembrolizumab成功の陰にLemvima(エーザイ)あり

Pembrolizumabが安定的に色々な癌腫で成功を納めている。 そのパートナーとしてのエーザイのLemvimaも評価を高めている。 肝細胞癌や子宮内膜癌においてPembrolizumab+Lenvatinib(Lenvima)が成功に繋がっていそうだ。 lemvimaはマルチキナーゼ阻害剤で、…

アデノシン代謝に関わるCD73阻害とA2AR阻害により免疫チェックポイント阻害薬を効きやすくする可能性

腫瘍代謝におけるアデノシン代謝はもともと自分の研究テーマにも沿っていたのでマークしていた。このアデノシン代謝に関わる腫瘍細胞の表面分子としてCD39やCD73に着目をしていたが、その抗CD73抗体や、CD73によるATPの脱リン酸化によって生じるアデノシンの…

向かい風の中、肺癌治療に風穴を開けられるか?ブリストル・マイヤーズの次の手は?

先日取り上げたが、肺癌治療における免疫療法ののろしを上げて礎を守り通していた「オプジーボ(nivolumab)」も、現時点では「キートルーダ(Pembrolizumab)」に絶対王者の座を奪われてしまっている。 巻き返しを図るオプジーボは、現在の肺癌治療における…

melanomaにおける抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の耐性解除に膜タンパクのSK1阻害が有用な可能性

Resistance of melanoma to immune checkpoint inhibitors is overcome by targeting the sphingosine kinase-1. 【Nat Commun. 2020 Jan 23;11(1):437.】(オープンアクセス) 【内容】 腫瘍細胞におけるSK1(スフィンゴシンキナーゼ-1)の発現増加が抗PD-1…

CHMPは申請却下、FDAは迅速審査、肺癌においての抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体は無事適応を取れるのか?

ちょうど、下の記事を書いている時に見つけたものだ。 個人的には、上記ニュースよりも、今後の方向性を占う上での適応となる、 肺癌におけるヤーボイ(抗CTLA-4抗体)+オプジーボ(抗PD-1抗体)が適応を取得できるかどうかの分かれ道となる。 現在の肺癌治…

飛ばしニュース さすがNHK!「オプジーボ効く患者を高精度で見分ける手法発見」の罠

一瞬目を疑った。このニュースを見た事である。 私はそれなりに海外ニュースや国内の臨床試験にも目を通している。 現在の癌免疫療法のパイオニアである抗PD-1抗体「オプジーボ(Nivolumab)」の試験も追える範囲で臨床を変える試験などの動向を確認している…

免疫チェックポイント阻害薬は血栓症を誘発するのか?

最近になってよく耳にする機会が増えた「Cardio oncology」。 これを直訳すると「腫瘍循環器学」とでもいうのだろうか? この領域における専門的な学会も立ちあがっており、 臨床におけるがん患者の生命予後を循環器領域の観点で改善しようという働きかけを…

Eli LillyはもうImmune oncologyから撤退?

Eli Lillyのパイプラインにはそれなりに期待していたのだけれど、結果が伴わなかったのと流れ弾を受けて、Immune oncology部門は無くなってしまいそう。 Eli Lillyは2019年4Qの決算発表において3つのpipelineの開発を止める事を公表した。 どこかにpipeline…

ASCO2019アップデート Driver mutation無しのⅣ期NSCLCにおける化学療法のガイドライン

肺癌における化学療法も2017年から非常に多様化してきた。 ASCOにも昨年参加したが、もうDriver mutationか免疫チェックポイント阻害薬の話題ばかりでプラチナダブレットの話題は全くもってナリをひそめたようなものになってきている。ここ数年で治療体系も…

リンパ球を増やすIL-7製剤と抗PD-1抗体(Keytruda)の新たな可能性

また色々と可能性を模索しているようです。 MSDは結構、新たな治療ストラテジー創出に向けてアグレッシブですね。 T-cellに特化したNeoImmuneTech、Inc.という会社と組んで、 Hyleukin-7(NT-17)という製剤と現在、臨床応用されている抗PD-1抗体のKeytruda…

(ASCOGI 2020)抗PD-L1抗体(Avelumab)によるHER2ネガティブの胃癌と胃接合食道癌における1stLine化学療法後のAvelumabメンテナンス療法 vs 化学療法の試験

つい先日まで開催されていたASCO-GI2020。 この中でほのかに期待していた試験があった。 Oralで発表になったAbst No2780の試験 抗PD-L1抗体(Avelumab)によるHER2ネガティブの胃癌と胃接合食道癌における1stLine化学療法後のAvelumabメンテナンス療法 vs 化…

軟部肉腫のグルタミン依存性に断つことによる治療応用の可能性

軟部腫瘍に対する私の興味は尽きない。 軟部肉腫の予後の悪さをどうにかしたいという気持ちもあるが、このような肉腫ができるという事は、そもそも生体内で相当な異常がない限り発現しないだろうからだ。 となると、その異常はいったい何なのか?これがわか…

膀胱癌における免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

膀胱癌はもともと薬物治療による選択肢が少ないと言われている。 昨年あたりから免疫チェックポイントがプラチナ製剤を含む治療の後に使えるような状況になっては来ているが、まだ治療効果は限定的でもある。 免疫チェックポイント阻害薬単剤での治療の限界…

【基礎】マクロファージを働かせ免疫チェックポイント阻害薬の効果を上げられるかの検証

あくまでもマウスレベルでの検討であるため、まだまだ臨床への道は遠いかもしれないが、腫瘍免疫を司る上で欠かせないTumor associated macrophage(TAM)について触れている興味深い文献があった。 通常、このマクロファージはその表現型の違いからM1タイプ…

高齢者肺癌においても免疫チェックポイント阻害剤単剤は有用なのか?

肺癌で免疫チェックポイント阻害剤単剤が適応を取ってからもう3年以上経つのかと思うと・・本当に早いものでもある。melanomaで最初適応を取った事にも当時驚いたが、肺癌においても適応を有したことに大きな拡がりを感じたものだ。 今は、単剤での治療効果…

【nature】B-cellが免疫チェックポイント阻害薬の効果発現に重要な可能性を示唆

Bcells and tertiary lymphoid structures promote immunotherapy response. 【Nature. 2020 Jan 15. doi: 10.1038/s41586-019-1922-8】 【関連】 ・免疫チェックポイント阻害薬の効果発現に必要な因子は何か? ・どういう腫瘍微小環境であれば長期予後を実…

【nature】難治性軟部肉腫で免疫チェックポイント阻害薬が有用な可能性を示唆

●B cells are associated with survival and immunotherapy response in sarcoma. 【Nature. 2020 Jan 15. doi: 10.1038/s41586-019-1906-8.】(open accessではない) Petitprez F Team Cancer, Immune Control and Escape, Centre de Recherche des Cordel…

免疫チェックポイント阻害薬を効かせるにはB-cell(CD20+)の存在が重要(nature)

がんを制御するためには、TIL(tumor infiltrated lymphocyte)の存在が重要と言われている。これは腫瘍内にCD8+Tcellが存在するという事は、その腫瘍は免疫系に感作されていると言えることでもある。となればそこに浸潤しているT-cellは腫瘍特異的T-cellで…