免疫チェックポイントのirAE予測のbiomarkerの可能性?
Immune-related adverse events are clustered into distinct subtypes by T-cell profiling before and early after anti-PD-1 treatment.
【雑誌】 Oncoimmunology. 2020 Feb 2;9(1):1722023.
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/2162402X.2020.1722023
【インパクトファクター2019】5.333
【アクセス】open access
【著者】Kim KH 韓国
【目的】
免疫学的有害事象(irAE)はどのような症例でおこるのか?ベースラインと1週時点での末梢血(PBMC)のT-cellをフローサイトメトリー(FACS)で解析
【要約】
・irAEを生じた症例の末梢血におけるT-cellの分画をFACSで調べた
・抗PD-1抗体(胸腺上皮腫瘍31例とNACLC60例)で7日後のPBMCを利用
・irAEは45例で発症。G3は13例だった
・重度のirAEを生じた症例は
- ベースラインから治療後でeTregの有意な減少が確認
- ベースラインから治療後でTh17/Th1の高比率
- ベースラインから治療後でPD-1+CD8+TのKi-67発現の増加
となっており、T-cellのクラスタリング解析においては、
irAE症例ではTh17関連、TNF関連、CD8関連Treg(補償)、CD8関連Treg(非保障)の4つのサブタイプに分類された。
重度のirAEは上記4つがbiomarkerの可能性がある
・Treg(補償)は post/preでeTregが高くirAEはG1~G2が多い
・Treg(非補償)はpostでeTregを増やさない一方でKi67 post/preがほぼG3
つまり、eTregが増加していない一方でCD8+Tが増強している場合に重篤なirAEが発症する可能性が考えられている。
・心筋炎などの重篤なirAEは一部のサブグループに存在。
・肝炎や肺炎や甲状腺機能障害は複数のサブグループに存在していた
・今回の解析では特定のirAEがどのサブグループに属するかまでは結論付けられなかった
・G1~2のirAEのNSCLCでは良好なORRとPFSを示していた。
・重度のirAEは治療開始後3カ月以内に発現(中央値は4週)
【私見】
投与1週目・・というのはかなり早いような気がするが・・。
重篤なirAEが比較的早いタイミングで生じるため、1週目時点のかなり早いタイミングで免疫反応が起こっているのではないかとの事で1週目でみているようだ。
Th17は自己免疫性疾患の指標となっているため、その惹起がirAEに相関する可能性はあるかもしれない。Th17/Th1の比率は自己免疫性疾患発症の指標としても知られる。
またTNFαも腸管粘膜の炎症時に関わるためこの増加も考えられる(おそらくは大腸炎?)。これらの各々のパラメーターがどのirAEに紐づいているのかをみていればよりわかりやすかったとも考えられる。(おそらくはむずかしいのだろう)
Discussionにも記載されているが、B細胞、自己抗体、血清サイトカインなども絡んでいるため必ずしもT-cell側だけのeffectではない可能性もあるところは注意したい。
多癌腫でも再現性を確認する必要はあるかもしれないが、まずはFACSを保険償還しない限りは実臨床では検証する事は不可能だろう。あくまでも現段階では研究的なアプローチになる。