最近、某国で大流行の科学的考察がされていない安いメタアナリシス(メタ解析)
根拠のある医療を作り出すためにはまずは動物実験を行い検証し、そして再現性を確認してからヒトでの検証を始めていく。
そしてヒトでの有効性と安全性を評価するために適切な用量を見極める。(PhaseⅠ)
最後に今までの標準治療と比べて優劣をつける・・(PhaseⅡ&Ⅲ)
というのが大まかな流れとなっている。
格のはたやすいが、医薬品として認可されるまでには多大なコストと労力と時間が必要になってくる。一つの臨床試験を形にするだけでも数億~数十億、期間は2~3年はかかる(規模とPhaseに依るが)。
このように根拠を積み重ねてきて、今、様々な医薬品はヒトに投与されている。
この根拠はエビデンスとも言われており、エビデンス(根拠)に基づく医療の事をEBM(エビデンス・ベースド・メディスン)と銘打たれている。
この中で最も根拠レベルが高いものとしては、大規模なランダム化比較試験であるPhaseⅢクラスの試験であるが、それよりも質の高いものとしてmeta-analysis(メタ解析)という方法が存在する。
このメタ解析とは何かというと、とある医薬品におけるPhaseⅠ~PhaseⅢ試験のデータをすべて統合することで症例解析数を大規模なものにして統計解析をする方法。(恣意的に試験を外さず、すべての試験を対象としてカウントする事を前提)
つまり抗癌剤などであれば、生存に寄与する因子は何か?とか他剤と比べてどうなのか?という点を間接的に評価する方法でもある。
大前提として、どのようなテーマに応じたまとめ方をするのかを決めておくことが重要で、いわゆる臨床的問題点(Clinial Question)を明確にしておかなければならない。
このメタアナリシスのメリットとデメリットに関しては・・
【メリット】
・PhaseⅢクラスでは症例数の問題で検出できなかった因子などを見ることが出来る(ただし他の試験でもその因子を追っていればの話だが)
・データ結合して症例数を大きくできるので一つの試験では見れなかった因子を検出することが出来る可能性がある
・EBMとして引用されやすくガイドラインに影響を与えるアウトカムにもつながる
【デメリット】
・試験毎に解析方法や評価方法が異なるため統合が難しいケースが多い
・特異的な評価を行いたくても、それを検証している試験が無ければ評価不能
・とにかくデータまとめが心身ともにきつく、ノウハウが無ければ厳しい
・出自をしている団体の信頼性が影響したりする(製薬会社とか団体の信用性)
・ネガティブデータは論文化されていないケースも多く偏りやすい
など、なんかもうメリットをデメリットが上回っているのではないかと思えるくらい。
それだけデータ統合は骨が折れる作業になるのだが、このメタ解析を色々なジャンルで量産している国がある。
それは中国。
何故それが可能になるかというと、すでにこのデータを統合させるためのノウハウを知っているからである。色々と研究者と意見交換をしていると、色々と感じさせられるものがある。
①メタ解析を行うチームをすでに作っており役割分業実施(マンパワーがすごい)
②先ほどのclinical Questionを臨床上重要なものだけに絞っている
③エビデンスレベルの設定が緩く、すべての試験を横並びで評価
④考察がほとんどされていない
⑤自国で出しているメタ解析をさらに引用してメタ解析の上塗りをしている
⑥とにかく質が低いので評価の高いはずのメタ解析の評価が下がっている
などである。
本来作業量的にも、試験の背景不一致を調整するための検証を行ったり、各試験の質の評価をしてその偏りをなくすようにしたりして質を上げなければならないのに、それを度外視してポンポンと安い(インパクトファクターが低い)journalに掲載していく。
挙句の果てには、MEDLINEという、論文評価をするシステムにも反映されないようなjournal(ハゲタカみたいなジャーナル)に掲載されていたりする。
何よりも次につなげるためのissueや解決すべき問題を明確にしていない報告が多いため、単なる点数稼ぎかと思えるようなお粗末さ。
医学のデータは人の健康や生命に大きな影響を与える。これだけの被験者のデータを乱雑に扱う事は命への冒涜とも呼べる。
私はこの国の論文を読むときには30歩くらい引いて論文を読むようにしている・・。
メタ解析ってまともにやればすごく大変なのよ~。