腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

ASCO-GU2020 mUCにおけるenfortumab vedotin+Pembrolizumabの驚異的な効果(PhaseⅡ)

ASCO-GU2020も最終日です。

今年は結構面白そうな演題がたくさん。

その中でもひときわ目立っていたのがこの演題。

Bladderの2ndLineで免疫チェックポイント阻害剤のPembrolizumabが使える状況ではあるが、その治療効果はとても満足のいくものではない。

そこで、今回1stLineでの検証(PhaseⅡ試験)で、Pembrolizumabにenfortumab vedotinを併用する事で今後の有望な可能性を示している。

このenfortumab vedotinはBladderに過剰発現しているnectin4をターゲットとする抗体製剤。この薬剤の治療効果はASCO2019ですでに公表されており、単剤でも良い結果がでたためすでにFDAからbreakthrough指定を受けている製剤でもある。

今回の併用試験では、観察期間は11.5ヵ月でORRが73.3%でCRが15.6%(!?)。

という結果のようだった。このCR率には正直びっくりしている。

 

客観的な評価ではORRは73.3%となっておりDCR(CR+PR+SD)は93.3%・・。

pembrolizumabの2ndLineでの単剤の頃でさえPRが10~20%であったので、この跳ね上がり方は異常だ。

肝転移症例でも53.3%は効いている(ICIは肝転移が苦手な印象があったが・・)

PD-L1別でも評価をしており、PD-L1highで78.6%でPD-L1lowで63.2%となっている。

どうもこの試験ではPD-L1に関係は無さそうでもある。

Duration of response(DOR)は観察期間中では到達せず、

median PFSは12.3ヵ月で、medianOSは到達していない(1年OSで81.6%)

副作用は49%で特段問題となる物は上がっていなさそうだ・・。

 

この試験結果はESMO2019ですでに公表されており、その際には奏効率は71%であった。それを若干上回ってきているという事になる。

PhaseⅡであるためサンプルサイズは小さいが、この結果がPhaseⅢで再現されればとんでもない治療が出てくるという事になる。
2020年3月にはenfortumab vedotin+pembrolizumab vs プラチナベースの化学療法のPhaseⅢが動き出すという事だ。もしこれで勝てればbladder(特にmUC)においてプラチナを使わなくても良いレジメンが登場するという事にもなりそうだ。
今後に期待したいが、PhaseⅡの結果が必ずしもPhaseⅢに繋がらないケースもある。
期待と共に注意深く見ていきたいものでもある。