やっぱり難しい・・ 膵臓癌におけるICI+RT戦略(PhaseⅠ試験)
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の開発は様々な癌腫で走っているが、膵臓癌に関しては厳しいという現状が浮き彫りになっている。
今回の検証では定位体放射線療法(SBRT)と抗PD-L1抗体のDurvalumabと抗CTLA-4抗体であるTremelimumabを併用したPhaseⅠ検証が行われた。
この手の放射線療法との併用において、最も難しいのは線量とタイミングである。
今回の検証では、
CohortA1&A2でDurvalumab2週毎+8Gy(day1)と25Gy(day3以降)
CohortB1&B2でDurvalumab+Tremelimumab週毎+8Gy(day1)と25Gy(day3以降)
PhaseⅠなのでDLT(用量制限毒性)をまず観察していた。
一般的な有害事象はリンパ球減少だったとの事。
全体として2例PR(部分奏効)が得られたようだが、全体的な奏効率は5.1%。
PFSとOSの中央値は、
cohort A1で1.7か月、3.3か月。
cohort A2で2.5か月と9.0か月。
cohort B1で0.9か月と2.1か月。
cohort B2で2.3か月、4.2か月。
という結果だった。
という結果だった。
どう贔屓目に見ても良い結果とは言えない。
これを基に今後PDACでも開発を進めていくのかどうかは不透明だ。
個人的に気になるのは、RT照射は照射範囲が広いので骨髄にもダイレクトにあたる。
となると造血能障害も生じる事になりリンパ球がベースラインまで帰ってこない事が多々ある。よく放射線照射部位以外にも有効性が得られるという効果(アブスコパル効果)というものなどを聞く事があるが、そもそもリンパ球の総量を落としてしまう治療がどこまで有用なのかがよくわからない。
放射線療法をする事により腫瘍崩壊を起こし、抗原暴露しやすくなり免疫細胞による腫瘍抗原認識を増強するというのが一連の機序と考えられるが、果たして、リンパ球減少と抗原暴露とどう相関するのかはよくわからない。
また、抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体に加えてRTをしたところで膵臓癌を克服できないという事は、そもそも抗原提示がうまくなされているのかどうか?という原点的なところも気になるところである。
膵臓癌に関しては私個人も注目している疾患でもあり、今後有望な治療が出てきてくれることを切に願っている。