腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

CHMPは申請却下、FDAは迅速審査、肺癌においての抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体は無事適応を取れるのか?

ちょうど、下の記事を書いている時に見つけたものだ。

 

個人的には、上記ニュースよりも、今後の方向性を占う上での適応となる、

肺癌におけるヤーボイ(抗CTLA-4抗体)+オプジーボ(抗PD-1抗体)が適応を取得できるかどうかの分かれ道となる。

 

現在の肺癌治療においては、キートルーダ―単剤かキートルーダ―+化学療法が席巻しており、もはやオプジーボを見る影が無い。

もともとはオプジーボ単剤は二次治療以降の単剤で適応を有していたため、厳密には今は胃癌で治療されているキートルーダ―の位置づけでの承認ではない。

だが、先にキートルーダ―が入ってしまうと次の治療にオプジーボを使いにくいというのが臨床上の問題点にもなる。

そのためキートルーダ―不応であった症例は抗PD-L1抗体であるテセントリクが選ばれるケースも多い状況である。

 

肺癌領域においてはパイオニアだったオプジーボが再び返り咲くために必要な試験が、

今回ブリストル・マイヤーズ社のPress releaseで出ているCheckmate 227試験という試験だ。これがヤーボイ+オプジーボの1stLineの適応を取れば、一応は同じ土壌に立ち、他社とも戦えるようにもなる・・というシナリオだった。(分は悪そうだが)

 

2020年1月16日時点では、米国のFDAはこの治療において優先審査を行うというスタンスを示した。

 

一方で、EUを母体とするCHMPはこの申請を却下し、ブリストル・マイヤーズ社も申請を取り下げたとの事。

プレスリリースを見る限り、再申請も行わないようなものだ。

 

なぜこうなったかというと、どうもこの試験は評価項目のAmendmentを行っており、それが原因であるかのようだ。プライマリーエンドポイントのOSにおいて有利になるようにAmendmentを行ったことを指摘されている。

というか、主要評価項目を変更するというのは今までに聞いたことが無いが・・。

 

ブリストル・マイヤーズ社は米国企業であるのでFDAは優先的であるのに対し、EUは・・と勘ぐってしまう。

 

先は読みにくく、さらに免疫療法は評価が難しいという事はあるだろうが、中々PhaseⅢクラスになると明確でわかりやすい結果というのは本当に難しいものだと感じる。