腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

(ASCOGI 2020)抗PD-L1抗体(Avelumab)によるHER2ネガティブの胃癌と胃接合食道癌における1stLine化学療法後のAvelumabメンテナンス療法 vs 化学療法の試験

つい先日まで開催されていたASCO-GI2020。

この中でほのかに期待していた試験があった。

 

Oralで発表になったAbst No2780の試験

抗PD-L1抗体(Avelumab)によるHER2ネガティブの胃癌と胃接合食道癌における1stLine化学療法後のAvelumabメンテナンス療法 vs 化学療法の試験。

試験名そのものはJAVELIN Gastric 100試験(PhaseⅢ)と言われている。

試験デザインはこちら→JAVELIN Gastric 100 (NCT02625610):

 

この試験はどのようなものかというと、

胃癌の標準治療であるオキサリプラチンベースの治療を1コース実施し、そこからAvelumabとケモ群に分けて検証した抗PD-L1抗体の維持療法を評価する試験。

プライマリエンドポイントはPD-L1≧1%でのOS(全生存期間)

(抗PD-L1抗体メンテナンスかケモ継続群かのランダマイズ後からのOS評価)

今回の発表では観察期間中央値は18ヵ月だったようだ。

 

結果から言うとネガティブであった。

OSはAvelumab群で10.4ヵ月とケモ群では10.9ヵ月となっており、全く差が無い。

24ヵ月時点で評価してみると・・Avelumab群が22.1ヵ月でケモ群が15.5ヵ月

今、流行のCPS(Combined Positive Score:腫瘍だけではなく免疫細胞のPD-L1も評価)≧1%で見てみると、Avelumab群は14.9ヵ月でケモ群は11.6ヵ月(HR=0.72?)

medianPFSは3.2ヵ月と4.4ヵ月

奏効率は13.3%と14.4%

12ヵ月時点での奏効期間は62.3%と28,4%

奏効率は同等だが、いったん効けば奏効期間は長くなるという特徴は再現がある。

だが、結局の所、OSにおける有意差には至らずネガティブという結果になった。

 

Discussionでは、やはりbiomerkerにおいて焦点があてられていた様子。

既に臨床ではMSI-highに対してキートルーダ―(pembrolizumab)が使えるようになっているが、同様にMSI-highのpopulationに限れば結果が変わるのではないか?

というコメント考察として提示していた。

CPSも10%以上ならば良い結果に繋がる可能性があるとも語っている(データ未公表)

 

どのような切り口であれ、現状としては残念ながらネガティブとなっている。

個人的には数コースのケモを実施後に腫瘍での抗原提示能を上げておいて免疫にトラッキングさせることが出来れば予後改善にもつながると考えていた。

そうは単純にいかないという事だろう。

 

いくつか気になる点としては、

①観察期間を延ばせば差が開いてくるのか?

②1コースではなく2コース位の化学療法であれば何か変わっていた?

MSI-highは良いが、対象が少なすぎる拡大biomarkerの有無は?