高齢者肺癌においても免疫チェックポイント阻害剤単剤は有用なのか?
肺癌で免疫チェックポイント阻害剤単剤が適応を取ってからもう3年以上経つのかと思うと・・本当に早いものでもある。melanomaで最初適応を取った事にも当時驚いたが、肺癌においても適応を有したことに大きな拡がりを感じたものだ。
今は、単剤での治療効果の限界を超えるべく、併用でその治療効果を上げていこうという検証が進められている。
適応取得時から今に至るまで議論になっているのは、高齢者に対して免疫チェックポイント阻害薬は本当に有用なのか?という点である。この点は色々な試験解析結果からも一定の治療効果の可能性はあるという事で話は進んではいる。
今日の論文は、RWD(Real World Data)から、高齢者(65歳以上)の免疫チェックポイント阻害剤単剤の治療効果を検証している報告があったのでまとめてみた。
Real-world use and survival outcomes of immune checkpoint inhibitors in older adults with non-small cell lung cancer.
[Cancer. 2020 Jan 14](impact factor:6.102)
https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cncr.32624
【臨床上の問題点】
・75歳以上の症例でも免疫チェックポイント阻害剤は有用か?
・肺癌において免疫チェックポイント阻害剤単剤の予後不良因子は何か?
・PS不良例においても免疫チェックポイント阻害剤は有用か?
【内容】
イギリスにおけるReal world data。13年に渡るNSCLC症例を対象としている。興味深いのは65歳以上の1256症例のみに限定している事だ。
患者年齢の中央値は75.3歳となっている。
確定診断時にⅣ期であった症例が42.6%
2つ以上の併存疾患があった症例が48.7%。
PS不良例は11.5%で自己免疫性疾患既往症例は12.6%。
これらの症例群にPembrolizumabとNivolumabでの治療検証を行っている。
効果としては、OS中央値は9.3ヵ月(95%CI、8.5-10.5か月)。
1年生存率は43.0%(95%CI、40.2-45.7%)。
OSに影響を与えた因子としては、多変量解析で、
上記5つが死亡リスクに有意に相関していたとの事。
意外にもPS不良はOS不良に相関してはいなかったようだ。
また以前の自己免疫性疾患既往歴も関与はしていなかったとの事。
一般的なNSCLCでの予後不良因子がICI治療効果の悪化とも相関していた置いう形になっている。
今までの流れでは扁平上皮癌(SQ)においてはICIが効きやすいイメージであったがそうではなかったのも意外だった。
ちょっと感覚が合わない点がいくつか見受けられた。
本来PS不良というのは身体的な指標となっており、どこまで生理的なイメージを反映しているのかしっくりこないところがある。
免疫チェックポイント阻害薬は血球に作用する事が明らかであることから造血能が本当は大事ではないかと考えている。PSがこの内容まで内包するのであればよいが・・。
もし造血能までPSが指標として反映していないのであれば、今回のように高齢であってもPS不良例であってもICIで効果が出るのはなぜか?と言った問に答えるためには別の見立てや角度が必要になってくるという事になるか?
どの道、このRWDは国や人種が変わったり、微妙な対象のずれが結果に左右されることから、他のRWDと再現性があるかどうかを見比べる必要もあるだろう。