免疫チェックポイント阻害薬を効かせるにはB-cell(CD20+)の存在が重要(nature)
がんを制御するためには、TIL(tumor infiltrated lymphocyte)の存在が重要と言われている。これは腫瘍内にCD8+Tcellが存在するという事は、その腫瘍は免疫系に感作されていると言えることでもある。となればそこに浸潤しているT-cellは腫瘍特異的T-cellでもあり、免疫系のシステムを元に戻せば腫瘍を排除できる可能性があるともいえる。
このTILは生存や免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測の一つとも言われている。では、この腫瘍の浸潤しているリンパ球の特徴は何なのか?それを考える上で重要なのはT-cellだけではなくB-cellも重要だという事を理解させてくれる論文だ。
Tertiary lymphoid structures improve immunotherapy and survival in melanoma.
【Nature. 2020 Jan 15】
Cabrita R (Department of Clinical Sciences, Division of Oncology and Pathology, Lund University Cancer Center, Lund University, Lund, Sweden)
【内容】
Melanomaの臨床サンプルを用いて、抗腫瘍反応におけるB細胞の役割を調べている報告。腫瘍関連CD8+TとCD20+Bの共起が他の指標とは独立してOSを延長している事を発見した論文。
CD20と組み合わせたCXCR5およびCXCL13でIHCを行うと腫瘍内でのCD8 + CD20 +腫瘍における三次リンパ構造(TLS)の形成が確認できる症例を見いだせる。
ICIで治療された患者のコホートにおけるTLSに関連する遺伝子シグネチャーを導き出している。
さらに、B細胞に富む腫瘍には、TCF7 +naiveTまたはmemory Tの増加が確認できた。今回の検証では、TLSのない腫瘍のT細胞は機能不全の表現型を有していた。TILでのT-cellの表現型(TCF7+とmemoryに関わる表現型)が発現することが治療効果の改善に繋がっていた。今後の戦略としてTLSの形成を誘導する方法が必要である。
【私見】
TLSは早期がんで良く検出されると聞いている。やはり早期がんが制御されているのは腫瘍局所にTLSを形成し、前線基地を設けているためであるとも考えられる。ここにPD-1がどこまで絡んでくるか?(TLS内の血球がどこまでPD-1に依存しているか?)がまだわからない。ひょっとするとTLS形成をしている症例は極めて予後良好であることからICIの投与はいらないのではないかとも思ってしまう。
Ⅳ期まで進んでしまうとTLSの形成は少なくなり免疫逃避機構が前面に出てくるのであるとしたら、ここで抗PD-1抗体などが活躍する事になるともいえる。
ぜひTLS内での疲弊状態が腫瘍の進展とどう関係があるのかもみてみたい。
一方で、現在、ICIでもneo-adjuvantやadjuvantの検証も進められている。
検体レベルでTLSの確認と、疲弊状態のあり方によるICIの治療効果を確認してもらいたいものだ。