腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

やはり難しいSCLC治療への道(モノクローナル抗体Dinutuximabの治験失敗)

肺癌の中でも小細胞肺癌(SCLC)は治療選択肢が乏しく、進行も早い事もあり難治性であることが知られている。

この疾患の治療選択を増やすために各企業も色々なアプローチを行っているが、

今回、United Therapeutics社のUnituxinもSCLC開発に失敗したようだ。

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元々は小児の神経芽腫に対して一定の効果を示す治療薬であった。

機序としては、腫瘍抗原のdisialoganglioside, GD2(GD2はヒトの神経芽細胞腫が発現する腫瘍関連分子)をブロックする事で腫瘍進展を抑制するもの。神経芽細胞腫においては顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-2(IL-2)および13-シス-レチノイン酸(RA)と併用する事で治療効果を示している。

 

PhaseⅡ/Ⅲで再発難治性のSCLCの二次治療でUnituxinとイリノテカンを評価しているがイリノテカンに対するUnituxinの併用はプライマリーエンドポイントのOS(全生存期間)延長を見込めなかったとの事

 

どういう勝算があったのかは不明だが、SCLCの関門は突破できなかった模様。
2017年から始まり、経過を追ってはいたが残念である。
 
現時点でSCLCに関しての有効な治療オプションの広がりは、テセントリク(抗PD-L1抗体)+カルボプラチン+エトポシドの3剤併用で1stLineの治療を行えるようになった事だ。
 
ただ、まだOSは12ヵ月くらいであるので、さらに次の手を考えていく必要もあるだろう。SCLCにおいては抗PD-1抗体もチャレンジしていたようだが、ことごとく失敗している。
 
おそらくは単剤でのアプローチやLineでの検証が不透明であったことが背景にありそうだ。免疫治療はやはり早目に使った方がいいということも有るのかもしれない。