期待されるADC(抗体薬物複合体)probody技術を駆使したCytomX社の未来は?
第一三共のADC(抗体薬物複合体)のHER2をターゲットとするエンハーツを皮切りに、ADCの可能性を探索する挑戦は世界でも進んでいる。
米国カリフォルニアに本拠を持つCytomX Therapeutics, Inc.も
抗体製剤に関しては「masking peptide(マスキングペプチド)」を活用して薬剤が特定条件下(特に腫瘍部位)で活性化させるようにする理論の下で創薬を進めている。
この技術はいわゆる「probody技術」であり、腫瘍環境下の特定のプロテアーゼによって作用を受けるようにして、正常組織での副作用を軽減させる目的もある。
すなわち、力を損なわず安全性に配慮した薬剤の創出を目指している会社でもある。
結構、創薬pipelineも充実していたが、居つくか見直しの転換期を迎えているようだ。
(引用)https://cytomx.com/pipeline/#advancing-pipeline
2022年7月15日付の最新の情報では、TNBCをターゲットにしたCX-072(probody 抗PD-L1抗体)+CX2009(CD166 probody抗体)は
PhaseⅡで一部、腫瘍評価項目の奏効率を達成したが、別armでは達成できずとのことで試験を止めてしまっている。
それ以外に別候補のCX-2043( DM21結合EpCAMをターゲットにしたADC)もpriorityから外すとコメントしている。
現状、残っているのはabbieやBMS社との提携プログラムがメインとなりそうだ。
主力製品が後退したことを受けて、社長を含む経営層の一新や、約40%のスタッフを解雇することを公開した(2022年現在で174名しかいないので、70名近く解雇するということに・・)
個人的にはprobody技術に関しては「腫瘍への攻撃力は損なわず、正常組織の副作用軽減(防御力向上)」という戦略には大きな期待を寄せている。
現在も臨床導入されているIpilimumab(抗CTLA-4抗体:製品名ヤーボイ)も有用性は評価されているものの、毒性(irAE)の問題が懸念されている。
これが腫瘍が放出するプロテアーゼで分解されて初めてその部位で作用できるようになればirAEを軽減して有効性を高められる可能性もある。
すでにPhase1の結果も出てはいるがまだまだ先が長そうな点が気にかかる
Anti-CTLA-4 probody BMS-986249 alone or in combination with nivolumab in patients with advanced cancers: Initial phase I results.(ASCO2020)
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2020.38.15_suppl.3502