腫瘍免疫と免疫チェックポイント阻害薬の将来展望

腫瘍免疫関連の医療関係者です。主に癌や免疫などの研究に従事しています。近親者を癌でなくして依頼、研究を進めています。様々な癌における将来展望、現時点での方向性などを研究者観点で書いていきます。主に自分の忘備録ですが、癌と向き合っている方々への情報発信の場となればいいなと思っています。このブログで取り上げている内容はまだ日本で治療を受けることが出来ないものなども含まれますのであくまで今後の展望を見る、またはニュースとしてご覧になってもらえればと思います。

企業動向 ノバルティスとBeigeneの抗PD-1抗体TisilelizumabがFDAに蹴落とされる

日本では抗PD-1抗体としてNivolumab、pembrolizumabが日本でも上市され、抗PD-L1抗体としてDuruvalumabとAtezolizumabとAvelumabも癌腫固定にはなるが使用できる状況である

海外では独自の抗PD-1抗体の開発を各国で進めており、中国のBeiGene社も抗PD-1抗体のtislelizumabを展開、また中国の別の会社CStone社の抗PD-L1抗体sugemalimabも治験段階である。

そのほか、サノフィ社は抗PD-1抗体のCemiplimabを子宮頸がんや非小細胞肺癌に対して開発を進め、ノバルティスもSpartalizumabをメラノーマでBrafi+MEKiとの併用で進めていた(難しいようだが)

時代背景的に重要な疾患は先にNivolumabたpembrolizumabにおさえられているので、今まで検証していない、もしくは検証不十分だった疾患やいきなり併用で進めようとしていたのかもしれない。

 

NovartisがBeibgeneと組んで展開しているtisilelizumabは中国でtislelizumabをGlobalに持ち出せるように高額なコストをかけて努力はしているようだが、

つい先日、FDAから非小細胞肺癌での申請は取り下げることになったという報告が入った。

https://endpts.com/novartis-scraps-key-pd-1-submission-while-touting-significant-bolt-on-ma-firepower/

 

肺癌だけにとどまらず、過去には非ホジキンリンパ腫や尿路上皮癌での申請も失敗し、食道癌2ndLineでの申請も延期、今後の1stLineの上咽頭癌への申請もどうなるかわからない。

 

そもそも中国発で米国主導でなく患者組み入れも行っていないデータで承認申請を取得できるという発想だったのか?疑わしいところであるが・・。

さらに抗PD-1抗体が適応を取っていない、開発が進んでいない疾患で勝負するならまだしも先発薬がある中で同じ検証を重ねて承認をとれると感じているところもどうかと思う(明確なbiomarker検証試験も行っておらず)

同社のバイオシミラー事業の展望もあり株価は維持されているが、oncologyに関しては見込みがなさそうという気がしている。

FDAも通さないのに、さらに日本人症例も組み込まれていないのに日本が適応を取ってくるとは思えないためだ。

別試験を立てて検証しなおすなら別だが、そんな悠長なことも言っていられないと思う。

 

イーライリリー社も中国ですでに非小細胞肺癌で中国内で適応を取得しているsintilimabをFDAに承認申請を出すものの当然棄却されている。

https://endpts.com/fda-serves-up-a-quick-rejection-of-china-only-data-with-a-crl-for-lillys-pd-1/

意外にも中国の抗PD-1抗体と組んでFDAに承認申請を行っている会社はほかにも多くあるようで、その見込みはどうなのかなぁと感じる。

狙いは格安抗PD-1/PD-L1抗体でシェアを奪おうと考えているのかとは思うが、そんな薄い商業的目線だけでは到底だめだろう。

せめてもっと適格例を絞るとか、biomarkerにチャレンジするなどのほうが親近感が持てる。

 

中国は自前で解決できるからさほど痛くはないかと思うが、中国に絡んだ製薬企業は辛酸をなめる結果になっているのではないだろうか?